「AKB48の経済学」感想

 AKB48の存在は知ってる。とは言っても、以前秋葉原の街頭ビジョンに映っているのを見たり、わからないアイドルはAKBということにしておけとか、そういうことでしかない。
 この本を買ったのは著者の田中秀臣先生のファンであるという理由の他にも、AKB48ってなんなの? っていう疑問が解消されるかと思ったのが購入した理由だ。
 最初に結論を言うと、おニャン子クラブモーニング娘。などの様々なアイドル、そしてその時代背景に関して鮮やかに書かれているおかげで、そういうことなのか、と納得する部分が非常に多かった。
 そして、そのアイドルの分析を通じて語られる現在の社会に関する考察は非常に面白い。
 日本銀行の無責任による深刻なデフレ不況がもたらすデフレカルチャーや、その中で育った世代の様々な志向の変化。市場の裾野の広がりになどによってのアイドルの高年齢化。
 他にも大相撲とAKB48がいわいる日本型雇用システムに近いもので運営されているという指摘や、長引くデフレ不況による期待所得の低下がもたらした若者の地方回帰、という社会の変化のといったものも非常に説得力がある。
 この説得力というのは、やはり経済学というものに軸足を置いた視点から生まれるものだ。それによってもたらされるクールな見方が、この本により一層の説得力と面白さをもたらしているのは間違いない。
 さらに、そもそもこの本が書かれる発端がTwitterのつぶやきであったり、本の内容に関してTwitterで不特定多数に質問をしたことを生かしていることなどは、それに反応した身としては実に感慨深い。これもまた、本書で指摘されている心の消費なのだろうなと思う。
 ユニークでためになる、そして経済学への招待としての役割も果たせるであろう本。ということで、素晴らしい読書体験をさせてもらった一冊だった。

AKB48の経済学

AKB48の経済学