きまぐれ学問所

きまぐれ学問所 (角川文庫)

きまぐれ学問所 (角川文庫)

この本は星新一のエッセー集のなかでも一番気に入っている本。久しぶりに読んだけど、おもしろい。星新一は本当に偉大だ。
昔、一番熱心に読んでいたのが"「文章読本」を読んで"というエッセー。印象に残る部分を少しだけ抜き出すと、谷崎潤一郎三島由紀夫井上ひさし丸谷才一文章読本をざっと取り上げての以下の文。

 このあたりになって、私はやっと気づくのだ。普通の人は読本の名につられ、勉強のつもりで読み、感心しているのだろうが。
 これらの作者、人なみはずれた博識家なのだ。大変な読書家であり、だからこそ他の作家の文を自在に引用できる。つまり、そうでなくて、うまい文章は書けない。こう言ってしまっては、身もふたもないが。

本当に身もふたもない。それと以下の文。例として出している作家に時代を感じるけど、特に問題はないでしょ。

 結論。文は人なりとの言葉があるが、正しくは、文は人名なりである。
 なんらかの形で有名でなければ、一人称の文は、だれも読んでくれない。開高健島尾敏雄ソルジェニーツィンの書いた文だから、読むのである。

どれだけ衝撃的な経験が書かれていても、個人の体験として一人称で書かれたものは、作者が有名でなければ誰も読まないってことかな。かなり皮肉。
しかし、何度も読んでるんだけど、いつ読んでも素晴らしい文章だ。私にとっての理想です。